それはもう、ずっと、ずっと昔。 今から11年も前。 私が、5歳の時。 * * * “ピンポーン” お母さんとお父さんと私、3人が暮らす、この小さな一軒家にインターホンのベルが響いた。 「結子ちゃん、お父さんよ。開けてあげて」 「うんっ!」 いつもなら、お父さんの帰りはもう少し遅い。 夜6時とか。 でも今日はお仕事が早く終わったんだ、と嬉しくなり、私はお母さんの優しい声を背中に聞いて玄関に走った。