~まどろみの中で~



「気が付きましたか?」


椅子に座って何か書類に目を通していた石田が、ふと顔を上げた。


「あ……、オレ………」


「まだ横になっていて下さい」


起き上がろうとする奈桜を慌てて押さえる。


「あ……、何が……」


まだ少しボーッとするのか頭が動いてないようだ。


仮眠室になっている狭い部屋のシンプルなベッドに奈桜は寝ていた。
天井をぼんやり見た後、また目をつむる。


「秋月さとみさんをかばって一緒に階段から落ちたんです。覚えてませんか?」


もしかして打ち所が悪かった?
石田は少し不安になる。
今後に影響が出るんじゃ……。
仕事は?セリフは覚えられる?歌える?
踊れる?
石田の胸に噴き出すように不安材料が溢れて来る。