寒く、暗い廊下を歩いて、一つの扉の前へとやってきた。
どうやら別館のようで、先ほどの場所とは違い、とても質素なドアだった。
「ここは……兄様の部屋。あまり帰って来ないから……部屋といってもほとんど家具などはないのよ。」
ポツリとドアの前でつぶやく黒夢。
「兄様、入ってもいいですか?」
トントンっとドアを叩いて返事を待つ。
しかし返事は返ってこない
「おかしいわね、部屋にいないみたいだわ。」
困った顔をした黒夢。
「何処かへ行ったのかもしれないね、私は待つわよ。」
髪をさらっと手で流した。
金のような銀のような美しい髪がふわりと揺れる。
「私は心当たりを探して見るわ、白音はここで待っていて頂戴。」
そういってスタスタと歩いて行った。
もちろん後ろには護衛のいかついイザベも連れて……
「白音様………?」
後ろから小さな声がした。
振り返ると、縮んでもいないのに小さくみえる雪子の姿。
「ぁあ、雪子。どうしたの?」
振り返り雪子の前で少ししゃがみ込んだ。
「ここはすごい場所ですね、私は黒薔薇の宮廷に来たのははじめてなので驚いています。
とても暗いし、寒い………」
「でも、そんな環境でも笑顔で居続ける彼女達はすごいと思っているわ。」
雪子の肩を優しくなでた。
「あれ?……あんなところに噴水があるわ。」
廊下の端から見える庭園に噴き出る水が、見えた。
「雪子、ここで少し待っていて、庭園を見てくるわ。」
ドレスを掴んで、スタスタと走っていく白音。
「ぇえ!し、白音様!?」
混乱する雪子をおいて、そのまま走っていった。