9月11日。

誠は目を覚ますと、部屋の掛け時計を見た。時計の針は8時丁度を指している。

「元の世界に……戻ったんか……」

誠はゆっくりと起き上がると、眠たい目をこすって携帯電話を取った。

「もしかして……」

誠は麗菜の番号を押してみた。

「この番号は、現在使われておりません」

受話器越しに、そう聞こえてきた。

「そんなわけ…ないよな……」

誠は携帯電話を机の上に放り投げると、制服に着替えて学校に向かった。

「別の世界とは言え、死んだ麗菜に会えたんや…それだけでも嬉しいわ……」

学校に着くと、誠は自転車から降りた。

「……あかん!くよくよしても、終わったことは仕方ないやろ!」

誠は両手で頬をパンパンと2回叩くと、気持ちを切り替えた。教室に着くと、扉をガラガラと開けた。

「おはよー!」

「あ、おはよー、誠君」

誠の挨拶に、千里が答えた。

「あ、千里ちゃん、おはよ!あ、昨日さぁ、日記書き忘れちゃって……」

「えっ、大丈夫だった?」

「うん、別の世界に飛ばされただけやった」

「そっか。何か変わったことはなかった?」

「あ……う、うん、何もなかったよ」

一瞬、誠の頭の中に麗菜が横切ったが、話すのをやめた。

「よかった。次から気をつけてね」

そのとき、一つの考えが誠の頭を過ぎった

「なぁ、千里ちゃん」

「うん?」

「日記に、麗菜が生き返るって書いたらどうなるん?可能なん?」

生唾を飲み、千里の返事を待つ誠。

「……残念だけど、それだけはできないよ。私も、試したけど……無理だった」