私はそれから、丸3日寝込んだ。


全く眠れないまま日曜日の朝を迎えて、猛烈な寒気に襲われ、体温計が39度を指した。
おそらく、濡れたまま布団に入っていたのがいけなかったのだろう。
空腹に風邪薬を突っ込み、悪夢にうなされ、目が覚めたら月曜の早朝だった。

熱はまだ下がらない。
食欲もない。
拓と紅を思い出せば涙が出てくる。

母親が知らない間に食事を用意してくれていた。
テーブルの上にバナナとヨーグルト、それからおにぎり。
無理矢理起こしたり、声を掛けたりしないところが母親らしい。
あの人はいつも、私を大人として尊重してくれる。

おにぎりを1つだけ食べた。
それから風邪薬を飲んでもう一度布団へ潜り込む。
8時になったら、工場に電話しなくちゃ。
私が居ないと困るような仕事もない。
休んだって構わないだろう。
丈夫だけが取り柄の私は、祖母が亡くなった時以来の休日を取った。

次の日の火曜日もまた、仕事を休んだ。
とてもじゃないが人前に出れるような顔ではなかったし、微熱がまだ続いていた。


寝込んでいる間、何度も何度も同じ夢を見た。

私はテレビのクイズ番組に出ていて、机の上のボタンを押すと、ピコーンと赤いランプが光る帽子を被っている。
解答者は私の他に二人いて、二人とも若い女性だ。
男性のアナウンスでクイズが読み上げられる。
答えようとしてボタンを押すけれど、私の帽子は一向に反応しない。
クイズというクイズが、他の解答者に答えを持っていかれる。

焦って汗が滲んでくる。
押しても押しても、私のランプは光らない。
その内に、物凄く悲しくなってくる。
私は泣きながら、鳴らないボタンを押し続けるのだ。