どこを、どうやって帰ってきたのか、よく覚えていない。


カフェを出たのが14時少し前だったから、少なくとも一時間は歩きっぱなしだったに違いない。
部屋にたどり着いた時、私の足は棒のようで、身体は冷えきって震えが止まらなかった。
時計はもう、夕方の4時を回っている。


もう、何もかもどうなっても構うもんかと思っていた。
何なら、富士山が爆発すればいいと思う。
隕石が落ちてくるとか。
日本が海に沈んだって構わない。
例え世界が滅びたって。
もう、何だっていいから。
情けなくて格好悪い私をどうか消してしまって。

そんな馬鹿げたことが、ぐるぐると制御不能なまま脳内を飛び回っていた。

私は肌触りもすっかり変わってしまったソファーに座り、そうしてしばらくの間、放心状態に陥った。



紅が拓のアパートへ入って行った。


まさか、たまたま同じアパートに住んでいるということはあるまい。
そんな偶然があったのなら、私はここで首を括ったっていい。

あら偶然。
お隣なのね。
知らなかったわ。

そんなことが現実に起こり得るわけがない。
安っぽいテレビドラマじゃああるまいし。
ご都合主義にも程がある。