こうくんとは、週に一度は会った。
土曜日か日曜日、映画を観たり、ショッピングをしたり。
平日は仕事が早く終わると電話をし合った。
他愛もないことをおしゃべりし、おやすみなさい、と言って眠る。


私達の関係は、手を繋ぐだけで、キスもなければもちろんエッチもない。
こうくんは私の気持ちを大切にしてくれているに違いなかった。
私の中に拓が住んでいることを、よく分かってくれている。

もちろん、こうくん自身も、前の彼女の代わりに私を抱くようなことはしたくないんだと思う。
お互いにいい大人だからこそ、体を重ねることにも慎重になる。




「あら、素敵ね!
そのドレス!」


大安吉日の土曜日。
今日は明日香の結婚パーティー。

部屋に掛けてあったブルーのドレスを見て、母が言った。


「母さん、前から、瑞季にはこんな色が似合うんじゃないかって、思ってたわ」


本当なのか、嘘なのか。
これから明日香の結婚パーティーで拓に会わざるを得ないことを、母も知っているのだから。
母親なりに、勇気付けてくれているのだと思う。


「でも、このデザインなら髪の毛はアップにしなきゃね。
せっかくのパーティーなんだから、いつものお団子頭じゃなくて、美容院でも行ってセットしてもらったら?」



美容院なんて、一年近く行っていない。
でも、確かに。
こんなに素敵なワンピースを着るのに、お団子頭はないと思う。



「今から予約、とれるかな……」


私は近所にある美容院に電話をかけてみた。
何度か行ったことがあるし、腕もまあまあ。
幸い、夕方からなら大丈夫とのこと。