【坂下公子side】
あれから、私はどうやって家に帰ったかなんて覚えてなかった。
『別れよう』
緒方くんの言葉が、頭の中でこだまして。
呆然としていたら、緒方くんは離れていった。
……抱きしめてくれていたはずなのに……一瞬で緒方くんの温もりが消えた。
優しい口づけも、全て…全て……。
終わりを告げた。
私はひとり、涙を流してた。
私たちの関係は終わってしまった。
あの出来事が、全て夢ならばって何度願ったことだろう。
それでも現実は、現実で。
緒方くんが私の隣で、大好きなあの無邪気な笑顔を見せてくれることはなかった。