「どうして、電話の電源切ったんです?
酷いじゃないですか。」


「話すことがないからだろ。
てゆーか、お前、電話しときながら
なんでここにいるんだよ。」


「ここにいるって、用があるからに
決まってるじゃないの。
お忘れじゃないでしょうね?
今週末に両家で会食の約束があることを。」


えっ、会食?
両家ってことはご両親もだよね……。
って事は……


「心配すんなって。
その席でちゃんとこの話、
無かった事にしてもらうつもりだ。」


「えっ……?」


サトルさんを見ると
いつになく神妙な面持ちでそう言った。


無かった事って……
そもそも、私とサトルさんの関係だって
曖昧な関係だし……。
と、
私が複雑な表情をしていると


「お前は余計な事を考えなくて
いいんだよ。兎に角、俺は俺の
したいようにするから。」


と、いつもみたいにまたぐしゃっと
頭を撫でられた。


「ひゃっ。」


不意打ちで思わず声を出してしまった。


「これくらいでそんなだったら
さっきの続きになると
相当だな。」


と、ニヤニヤしながら言うサトルさん。


「もぉ~」と言いながらも
満更でもない顔で見つめ返す私……。











「ちょ、ちょっと何よ。
何、二人していちゃついてんのよ。
それになんなのよ。
無かったことって勝手な事を
言わないでちょうだい。
サトルさん、
分かってらっしゃるでしょ?」


「何をだよ。」


サトルさんが憮然とした顔で言うと


「この話が櫻やにとって
今後、どう影響するのかってことよ。」


目の前の黒髪美人は
毅然とした態度でサトルさんに言った。