朝、斉藤 石五郎は村を後にした。

残る男性達はヒグマを討伐してマユの亡骸を収容すべく、約30人の捜索隊を結成した。

昨日の足跡を追って森に入った彼らは、150メートルほど進んだ辺りで。

「っ…おいっ!居たぞ!」

朝靄の視界の悪い中、件のヒグマと遭遇した。

馬を軽々と越える大きさ、全身黒褐色一色ながら胸の辺りに『袈裟懸け』と呼ばれる白斑を持つヒグマ。

誰もが愕然とするほどの巨体を咆哮と共に震わせ、ヒグマは捜索隊に襲いかかった。