夜になり、太田家では幹雄とマユの通夜が行われたが、村民はヒグマの襲来に怯え、参列したのはたったの9人だけだった。

幹雄の実母・蓮見 チセ(はすみ ちせ、当時33歳)が酒の酌に回っていた午後8時半頃の事だ。

「!?」

大きな音と共に居間の壁が突如崩れ、ヒグマが室内に乱入して来た。

棺桶が打ち返されて遺体が散らばる。

「ひっ、ひぃいいぃっ!」

恐怖に駆られた会葬者達は梁に上り、野菜置き場や便所に逃れるなどして身を隠そうとする。