北海道三毛別六線沢は、日本海の沿岸から内陸へ30キロほど入った地区である。

地名の『三毛別』は、アイヌ語で『川下へ流しだす川』を意味する『サンケ・ペツ』に由来する。






1915年(大正4年)11月初旬のある夜明け前、開拓村の池田家に巨大なヒグマが姿を現した。

飼い馬が驚いて暴れた為、その時の被害は僅かなトウモロコシに留まった。

村は開拓の端緒にかかったばかりの土地でもあり、このような野生動物の襲来は珍しいものではなかったが、主人である池田 富蔵(いけだ とみぞう)はぬかるみに残った足跡の大きさに懸念を持った。

デカイ。

これまで熊が村付近に襲来した事は何度もあったが、これ程の足跡を見たのは初めてかもしれない。

富蔵の予感は正しかった。

そしてこれが後に訪れる、悪夢の始まりでもある…。