ツクツクボウシが鳴いていた。


学校帰り。彼の家へと向かう道すがら、わたしはふと立ち止まり、耳を澄ませる。

遠く遠く、ゆるやかな空気の波に溶け込んで、鼓膜を揺らす初秋の歌。

どちらかといえば、名前の由来にもなったその鳴き声よりも、歌の終わりを告げる絞り出したような鳴き声の方が好きだったりする。なんとなく。



ジーワジーワジーワ、ジー



こんな感じのやつだよ。
以前彼にそう伝えたとき、陳腐だね、と笑われた。

彼は蝉の声に不快感を覚えると言う。

あれは、ただの五月蝿い(うるさい)ノイズであると。