「おれの名前は?」

 藤井が自分を指さしながら、緋色に問う。

「・・・」

「じゃあ、さっ、おれの名前は?」

 佐々田が藤井を押しのけるようにして、緋色の前に立つ。

 じっと見つめる緋色。

 期待するように答えを待つ佐々田。

「・・・えっと・・わかんない」

 緋色の悪びれない態度に、
 脱力感たっぷりに2人は項垂れる。

 ここ4、5日の間の日常化しつつある光景。

 何度も何度も名前を教えては、覚えていないの繰り返し。


 緋色は一向に名前を覚える気はないらしい。

 そもそも覚える理由がわからないのかもね。