「失礼します」

胸のイライラと膝のピリピリを抱えたままたどり着いた保健室。
ドアを開けると、部屋の中には椅子に座る恭ちゃんと、その向かいに座る女子生徒の姿があった。

「ああ、実紅……」

そう言って、恭ちゃんは営業スマイルを作ったのに。
一瞬にして、その表情を険しいものに変えた。

なんだろう。
こんなジャージ着てるから軽蔑されたんだろうか。それとも、イライラが顔に出てたのか。

少しの間私を見ていた恭ちゃんは、また穏やかな表情を作ってから、女子生徒に視線を戻す。

「熱もないし、顔色も悪くない。
風邪の諸症状も出ていないみたいだし……そうなると、僕にできる事はないから、本当に体調が悪いなら病院に行った方がいい。
どうする? 早退するなら担任に提出する届を書くよ」

どうやら体調不良らしい女子生徒がどんな顔をしているのか、入口に立つ私からは見えないけれど。

「ううん。別にいいかな。
なんか先生の顔見たら治ったっぽいし? なんか違う病みたい」

語尾につくハートマークは私からでも見えた気がした。