物事にはタイミングってモノがある。

急いては事を仕損じるケド、あまり慎重を期していても流星光底長蛇を逸しちゃう。

最良のタイミングを見極めるのは至難の業なのだ。

そして今ココに、重要な物事に関するタイミングを計る男が一人…

自室の畳の上に胡座をかいた由仁は、ちゃぶ台に肘をついて頭を抱えていた。

余談だが、遊廓風お屋敷に洋室はない。

土間ではなくキッチンだし、五右衛門ではなくシャワー付きだし、汲み取りではなくウォシュレットだが、他はほとんど純和風。

10畳ある由仁の部屋も例外ではなく、階段箪笥や組子行灯などのケヤキ材で作られた民芸家具が配置され、格式高い和の美を醸し出している。

うん。
三曲の格子屏風で目隠しされたベッドが異質に見えマスネ。

まぁ、これくらいにして話を戻そうか。

悩める由仁が見つめるモノは、ちゃぶ台に乗った宿題…
などではなく、スマホ。

顔を真っ赤にして歯軋りする日向と、携帯番号とメールアドレスを交換したのは金曜日。

あ。
あくまで交換だから、ネ。
強奪じゃないから、ネ。

翌日の土曜日は我慢した。

一夜明けて、本日は日曜日。

かけるべきか、かけざるべきか…

気分はハムレットだ。