やはり客間でも、日向は一人取り残された。

お茶を出してくれた『カズヨさん』が、すぐにドコカへ行ってしまったから。

落ち着いたトコロで改めて周囲を見回すと、やっぱこの家スゲぇわ。

坪庭に面してグルリと廊下を巡らせた、コの字型の瀟洒な造り。
壁を丸くくり抜いた飾り窓や鮮やかな朱塗りを実にバランスよく配置した、凝った内装。

なんつーか、粋。

コレ、旅館っつーかさぁ…
遊廓っぽくね?


(『由仁太夫でありんす』とかって、先輩が襖開けて入ってきたら…)


似合いすぎて笑い死ねる。

くだらない妄想をしながら日向が高そうな茶器に口をつけていると、本当に襖が開いた。


「っ?! ぐ… ゲホゲホっ」


お茶、変なトコロに入ったし。

部屋に入ってきた人物を見た日向が、激しくムセた。

その人は花魁ではない。
だが、花魁を上回る艶やかさ。


「どしたのー?
お茶、苦かった?」


緋色の角帯をアクセントに、煤竹色の紬を胸をはだけて着流した由仁が、心配そうに首を傾げた。

ソレ、ナンテ耽美?

ダレかー 防腐剤持ってきてー