「 ・・・はっ・・ん・・・ッ 」


  
 荒い呼吸の中から時折漏れる甘い吐息が
 この狭く暗い部屋の中を侵食していく。






「 あッ・・・陽・・・っ 」



 僕の名前を呼ぶその淫らな声は,
 僕の理性を段々と追い払っていく様で・・・



 何を求めて,何を感じているのか
 分からないその目で
 僕の黒い瞳をじ,と見詰める。


 僕は彼の白い鎖骨に,
 必死になって痕を付けていく。

 真っ白な鎖骨には赤が映えるな・・・
 僕はそう,感じた。







「 はる・・・っは・・・るッ・・ 」


  
 発色の良い赤い唇から発される僕の名前は,
 今まで抱いてきた誰よりもずっと,
 魅力的で,自分を欲情させてしまうもので。



 僕の唇が,真っ白な素肌を這うだけで

 小さな身体を跳ねさせ,悩ましげな声を薄く漏らす。


 頬から鎖骨へ,鎖骨から胸へ
 唇を降ろして行く度に彼は身体を
 小さく跳ねさせている。


 僕はそんな彼の首筋に歯を立てる。







「 ・・・っ!! 」

 痛みに声にならない声を上げ,目を見開いている。

 僕は犬歯で彼の皮膚を食い千切る程に強く噛み付いた。
 口の中に彼の血の味が広がる。






 ・・・美味しい。