「ま、間に合ったあ……」


 窓際の一番後ろっていう、最高ポジションに位置する自分の席に着いたのは、ちょうど授業開始のチャイムが鳴ったのと同時だった。


 走って乱れた息を整えながら、英語の教科書をカバンから取り出していた。


 ……なんか、視線を感じるんですけど。


 私の2つ前の右隣りの席、つまり、涼の席から。


 『ケ・イ・タ・イ・ミ・ロ』


 口パクで自分のケータイを指差しながら、私の方を睨んでる。


 え、こわい。


 こわいんだけど……?


 そう思いながらもケータイを取り出そうとしたら、りんちゃんが教室に入ってきた。


 意外なんだけど、りんちゃんは英語の先生なんだよね。


「んじゃ、教科書この前の続きからなー」


 日直が号令をかけたあと、りんちゃんのその言葉で授業が始まった。


 私はりんちゃんの目を盗んで、ポケットに入ってたケータイをこっそり取り出した。