話し込んでしまったせいか、いつの間にか完全下校時刻の19時になっていた。


 外はすっかり暗くなっていて、教室の温度も下がったみたいで心なしか肌寒い。


「あー、やべ。こんな時間までいるつもりじゃなかったんだけどな。とりあえず、出て歩きながら話そーぜ」


 中原先輩はそう言うと教室の外に出て行ってしまった。


 これって、私も一緒に帰っていいってことなのかな……?


 スクールバッグを握りしめて、どうすればいいのか考えあぐねていると、佐伯先輩が私のバッグを奪うように持った。


「え、っと。なんで……」


「帰るぞ」


 佐伯先輩はぶっきらぼうにそう言い放つと、私のバッグと自分のバッグを持って中原先輩のあとを追っていってしまった。


 佐伯先輩はきっと、私がどうすればいいかわからないでいるのを察してくれたんだと思う。


 そんな不器用な優しさに気がついて、思わず笑みがもれた。