──ピロリン


メールの着信音にケータイを手に取ると、送信者は灯汰で。


『月見団子美味い!』


そんな本文と、もっちりまんまるのお団子の写真が添付されている。


そんなわざわざ送ってこなくても、と思いつつクスリと笑った。


別にお互いまめな訳じゃないから、そこまで頻繁にメールはしない。

周りと比べたら少ないらしいけど、気にするようなことじゃないと思う。

用があったらするし、ふと相手を思い出したら『今、何してる?』なんてとりとめもないことだって訊くし。


後悔でいっぱいで苦しかったエイプリルフールの思い出は幸せで包まれて、何事もなく日々を過ごしている。

とはいえ、今も喧嘩はしょっちゅうしているんだけどね。


『あたしも今から食べるーっ!』


そんな返事を返してひとまずケータイを閉じた。


十五夜のお月見。

なのに月も見ずにお団子を食べて。

色気も乙女も何もない。


だけど、珍しい画像つきメールに少し嬉しくなる。

そんな夜でも、いいよね。