「う、わ。綺麗だな……」


夏の時と同じように夏樹くんのおじいさんのお家の大木の上。

綺麗なオレンジ色の光に照らされています。


今日は中秋の名月。

つまり美味しいお団子を食べることができる十五夜なのですが。

またもや、彼はわざわざこの町まで来たのです!


「学校は?」なんて聞くのも恐いので知りません。

プチ家出という訳でもなさそうですしね。


「ご苦労なことで……」

「ほら、今日は星より月がよく見えるぞ!」


わたしの言葉を聞きもせずに空に釘づけですね。


全く……なんて思いながら、わたしも綺麗な月を見るのが楽しかったり。


ぼんやりと言うよりは、物凄くはっきりと。

都会と比べると特に綺麗なんだとかで、夏樹くんははしゃいでいます。


まぁ、たまにはこんな秋の日があったっていいですよね。


月の下。

優しい光に包まれて。


想いは今は香ることなく。


飽きる様子もなく空を見上げる夏樹くんの隣に。


…………とりあえず、わたしは早くお団子食べたいんですけどね。