「紗姫、大丈夫か?」


「えっ…」


お昼休み。


バッグからお弁当箱を取り出すと、隣の席の淳也から心配そうな声を掛けられた。


「今朝の様子からすると、あの無愛想王子に発言の取り消しをしてもらえなかったんだろ?」


「う、うん…。まあ…」


何とも歯切れの悪い言葉を返す。


思わず溜め息が零れた。


朝は、たくさんの女子生徒の恐ろしい視線や悲鳴を浴びながら教室までやって来たし…


休み時間になれば、学年問わず女の子たちが私を見物しに来る。


まだ午前中の授業が終わっただけなのに、半端ない疲労感だ。


「ったく、アイツ…何考えてんだろうな?」


単に女除けにしたいだけだよ…。


ついつい口にしそうになったけど、グッと堪えた。


光琉から、付き合うフリをしていることは、二人だけの秘密にするように言われてる。


バラしたりしたら、後が怖い。