ケータイ小説 野いちご

☆毎日が映画のような一コマ★ ~触れないキス~

butterfly

瞬きよりも速く、羽根を広げるよりも鮮やかに、世界は彩られている。

空に向かってシャッターを切りながら俺は、降り注ぐ光の粒子にバランスを合わせた。聞き慣れた無機質な音はいつだって耳に心地良い。思った通り。悪くない。眩しい季節の手応えがそこにあった。


「こんなところにいたの」

振り向くと、小さな女の子を抱きかかえながら美華が歩いて来るところだった。いつも子育てが一番で自分のことは二番目にしている美華も、今日はドレスアップしている。いつもよりメイクも濃い。キレイにすればキレイになるのにもったいない。

抱きかかえている女の子もいつもよりおすましした顔をしていた。その顔と同じくらいの大きさのカメラのレンズを向けると、金色の産毛が輝いているのがよくわかる。

「どうした、絵空?難しい顔してるな」

「知らない人ばかりだからね。小さな子どもは絵空だけだし」

「人気者はツライってか?」

すると絵空は桜の花びらほどの小さな手で俺が構えていたレンズをあっちいけ、と叩いた。俺は笑う。美華も笑う。絵空だけは不機嫌そうにプイッと顔を美華の肩にうずめた。

< 1/ 12 >