当たり前のことなのに。お前と俺は親子なんだから。

遠慮なんかしなくていい、我が儘を言っていい、お前のしたいことをすればいい。


ランドセルを選ぶ時も、安いのを選ぼうとしていた。

子供なんだから大人ぶらなくていい。甘えていいんだ。


1番人気でオススメのランドセルを買ってあげた時は、申し訳なさそうにした。

今では宝物のように扱っている。

帰ってきてすぐにランドセルを磨いているからだ。


少しでも擦れたりして傷が付いたら、謝ってくる。そして直せないものかと悩んでいたりもした。


まだ親子というより、友達という感じだろう。


それでもいいが、俺はあいつの親だ。




『行ってらっしゃい』



笑顔で手を振る梓。

俺が見えなくなるまで手を振っていた。


結んでもらったネクタイを触って、今日も頑張ろうともう一度呟いた。