気がついたら画廊を飛び出していた。

自分がどこへ向かっているのかわからないまま、ひたすら走ってる。

ずっと思ってた。

―――本当は画廊でお客さんに優しくするタケルを見たくない。

けど、十八の時からずっとホストをやっていて、水商売と取り立て屋しかやったことがないという彼に、せっかく始めた画廊の仕事を辞めてくれとは言えない。

タケルは最近、常連のお客さんと二人っきりで、安藤画伯のアトリエを訪ねることがある。

鎌倉のアトリエまで、車で片道二時間もかかるのに……。

それが、せっかくのお休みの日だったりする。

そんな日はジリジリしながら、ひたすら彼の帰りを待つ。

それでなくても、不安でいっぱいなのに、目の前で他の女の人に触っているタケルを見るのは耐えられなかった。

たとえ相手がお姉ちゃんでも……。

たとえ二人がお互いを何とも思ってないとわかってても……。