ケータイ小説 野いちご

シスター・オルランドへの手紙

10 騎士と本箱のお姫さま

リル、君のせいじゃない。

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21

「……君が使用人に、取次ぎを許したのか? アン」

オーガストは懸命に声を押し殺していたが、怒りに震えている分、その物言いには凄みが増していた。

「お怒りになるようなことじゃないわ、オーガスト。届いた手紙を本人(リル)が受け取るのは、当たり前のことよ」

アンの受け答えは、ごく冷静だった。
そして、自分の傍らで、封筒を手に震えている義妹に、そっと声を掛ける。
「いいのよ。お行きなさい、リル」

でも、オーガストのぞっとするような視線に射すくめられ、リルはなかなか一歩を踏み出すことが出来ない。

どうして、こんな風になってしまうの?
わたしのせいで、お兄さまとアン義姉さまが、言い争うなんて。
きっと、もう。
わたしの何もかもが、オーガスト兄さまのお気に召さないんだ。

こみ上げる涙で、リルの視界がにじむ。

……泣いたりしたら、また叱られる。

泣けばいいと思っているのか? というオーガストの皮肉に満ちた声は、首筋から氷を入れられたかのように、聞く者をぞっとさせる。

やっとのことで足を動かすと、リルは駆け出すようにして、その場から逃げだした。



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