もちろん私と剛史さんは一緒にアパートを出て会社に向かった。初め、近くに玉田さんの顔をした男が潜んでいないかと心配して辺りに目を走らせたけど、どこにもそれらしい人はいなかった。


「私、気にし過ぎかな?」

「いや、気にし過ぎくらいで丁度いいと思う。なんせ相手は宅配便に成りすまして家に来るぐらいのイカれた奴だからね。用心するに越した事はないよ」

「うん、そうよね?」


と言っても、剛史さんが側にいてくれたら安心だわ。もし現れても、あんなひょろひょろした男なんか、剛史さんの腕に掛かれば一発よ。


剛史さんとお喋りしながら歩いていたら、いつの間にかって感じで会社に着いてしまった。いつもに比べて時間を感じなかったし、通勤が楽しいと思ったのは今朝が初めてだと思う。


「じゃあ、俺はなるべく早く玉田の所に行って、あいつを病院へ連れて行くよ」

「はい。よろしくお願いします」

「おお。状況はメールで知らせるから」


私の総務と剛史さんの開発部はフロアが違い、剛史さんは先に開発部のフロアでエレベーターを降りて行った。

「また後でな?」

「はい」


別れ際に剛史さんが私に手を上げたから私もそうしたのだけど、エレベーターの扉が閉まってその手を下げる時、周りの人の目がちょっとばかり痛かった。特に女子社員の……