「あなたは、世の理をご存知ですか? 世とは無から始まり、文明が生まれ、繁栄し、やがて衰退して、新たな文明が誕生する。その繰り返しなのです。この国も、そこに生きとし生ける者たちも、皆そうやって生まれては死に、再び生まれるを繰り返している」

「もちろん私も例外ではありません。見目形こそ異なるでしょうが、私は私として、前の世でも、次の世でも、生まれては死んでいる。人とは、世とはそういうものなのです」

 私はぽおっと、男の声を聞いていた。


 内容は難しくて、良く分からなかった。

 それでも、男が私に話しかけていることが嬉しくてたまらなかった。

 それだけで顔の辺りが酷く熱かった。



 必死で男の音を覚えた。

 一言も逃すまいと耳を澄ました。

 両耳も酷く熱かった。

 震えるほどの幸せが次々と押し寄せた。




 烏帽子の男は私と紙を交互に眺めながら、涼やかに、淡々と続けた。