残念なことに、理緒とはクラスが離れてしまった。
中学校は5クラスだったけど、高校は8クラス!
さすがに一緒にはなれなかった。

またあとでねー!って手を振ってそれぞれの教室に入る。



出席番号順に並ぶ机。
私の番号は14番。
目で机を順番に数えて席に座る。


入学式だから…と少し早く来すぎたみたい。
まだ教室には私しかいなかった。
携帯を取り出し、理緒にLINEする。

やっぱり理緒もまだ1人らしい。
自然と始まるスタンプ合戦。
何と無く笑みをこぼしながらスタンプを連打していく。



「あの…」

やっと1人目が来たらしい。

男の子だ。


「はい…。」

男の子だと知った瞬間、声が小さくなる。

「そこ…多分俺の席…」

「ふぇっ!?」

急いで机の数を数える。

11…12…1…3。

「あ!ごめんなさい!」

急いで立ち上がろうとすると、なんとなく膝に置いていた携帯が落ちてしまった。

「わぁ!」

思わず大きな声が出てしまった。

「大丈夫?」

男の子はゆっくりとしゃがみ、携帯を取り、焦る私に優しく携帯を渡してくれた。

「あ、ありがとうございます。」

一個後ろの席に座る。
男の子は私が座っていた席に座り、沈黙が始まってしまった。

男の子の机には生徒証が置いてある。

斎藤 大樹

さいとう だいき……?

男の子の名前を知った。

理緒からLINEの返信が来た。
廊下に出て来て。

廊下に出て理緒を探す。

「あ!理緒〜!」

「いたいた!やっぱ廊下も長いね!」

「ほんとだねー!」

「優菜のクラス、誰か来た?」

「あ、うん。男の子が1人。 そっちは?」

「こっちも!男子が1人だけだよーー」

「そっかー!やっぱ早すぎたかー。」

もっと早く廊下に出て話してれば良かったな。
そしたらあんな恥ずかしい思いをしなくて済んだのに…
さっきの出来事を早速理緒に話す。

「いいじゃん♪」

何故か理緒はすごく嬉しそう。

「何がよ〜!」

「だって、話せたんでしょ!?男子と!」

「まぁ、話せたけど…」

「初めの第一歩! 私もクラスの男子に話しかけてみよっかなー!」

「え!」

「うん!そうする!負けてられないからね!ってことで、解散!ばいばーい!」

手を振りながら教室へ戻って行ってしまった。
負けてられないって…そんなんじゃないのにな…

仕方なく教室に戻る。


携帯を自分の机に置いて、ベランダに出てみた。
風が気持ちいい。
校庭の奥に並んでいる桜がピンクでとっても綺麗。写真…写真撮ろう!

教室の中へ戻って机に行く。

「…あれ?携帯…」

さっきまであった携帯がない。
ふと周りを見渡すと…

なんと!!
斎藤大樹が私の携帯を持っている!

「あのっ…それ…」

「あ!ごめんごめん。」

「えっと…何してたんですか。」

「LINE。」

「え?」

「LINE、貰ったよ!斎藤…優菜ちゃん?だよね。」

さり気なく名前を呼ばれた。普段は名前を呼ばれるだけで鳥肌がたってしまうのに、何故か斎藤大樹に名前を呼ばれることが嫌ではなかった…?

いや!違う。
あまりに予想外なことをされてた驚きで、名前のことなんてどうでもよくなってたんだ……………きっと……





こんな始まり方もあるらしい…