焦った。


一言で表すならまさにこれだ。


さっき買ったいちごみるくを教室で飲みながら考える。


冷静になって考えてみれば、あんな風にあからさまに接した方がかえって怪しまれたかも。


いくら顔が同じでも、あの銀の髪を見たあとじゃあ、今の私の姿とはかなり印象違ってみえるだろうし。


今度は普通にしてみるか。



飲み終わったいちごみるくをごみ箱に捨てると、タイミングよく授業のチャイムが鳴った。



次は確か歴史だったかな……眠くなりそう。


いっそのこと寝ようかな、と考えているとガラ、と扉の音がした。



「お前ら、席つけー。今日は変更で今から俺の授業するぞ」



そう言って入って来たのは大ちゃんだった。


みんな慌てて授業の準備を始める。


……ここにいない人、あとで大変な目に合うだろうなぁ。


他人事のように考えて心の中で合掌しておく。まぁ、莉都もいないんだけど。


そういえば、前に莉都が言ってたっけ。


大ちゃんの授業を初めてさぼったとき、ものすごく怒られて怖かった、って。


それからみんな大ちゃんの前ではもんなおとなしいんだよ、みたいな話。



「おい、満月。河井はどこだ」


「知らないよ」


「ちっ……あの野郎」


「…………」



確かにちょっと本気でキレてる。


さすがに、これは少し怖いな。