「で、那智は俺に何をしてほしいの?」


私の作った肉じゃがを箸でつつきながら、だらしなく笑う紺さんに私はもろ苦い顔をした。




―――――人喰いの那智さんは、何故かあれからというもの私の家に度々居座るようになった。
すでに両親を失くしている私には保護者の了承なんて必要ないとはいえ、彼は余りにも図々しすぎないだろうか。

両親を失くした理由も何も聞いてこない彼は、なんとなく私に気を使っているんだろうと思うけれど、それでも彼はやはり図々しいことこの上ない。


………特に、ご飯の時間は必ず現れるところとか。




「………何も求めてませんよ」

「えー。でもさ、あんなお腹減ってる中助けてくれたのは那智だけだったんだよ?お礼くらいさせてほしいなあ」

「そりゃあ…あんな雨の中うろついてる人なんかなかなかいませんって」



(私は別として、)


良く考えれば、よくもまあ私は人喰いと普通にやり取りができているものだと、我ながら感心してしまう。
普通なら喰われている。彼が普通の人喰いであったなら。



「那智は何歳?」

「19歳です」

「若っ!」

「……一体紺さんは何歳なんですか」


見た目はそう変わらないのに。
ますます紺というこの人喰いがよく分からない。