「何で‥‥泣いてるんだ?」


背後から声がした。
振り返ってみるとココに居るはずのない彼が立っていた。


郁の事が好きすぎて幻まで見るようになっちゃったのか…


そう、働かない頭のどこかで思った。


「なん・・・・で?」


消えそうな声で言った。


「何でってここに来るっていう約束だったろ?
すごい遅れちゃったけど・・・・」


私はゆっくり立ち上がった。
幻なら触れたらすぐに消えてしまうような気がして近づけなかった。


「だって…事故ったって・・・・
意識無いって・・・・」


涙声でそう言った。
すると彼はフッと優しく笑った。


「それ、結構前の話だよ。
確かに自転車で転んで頭打って意識無かったけど。
もう、平気だから」


「・・・え?」


私は信じられなくて聞き返してしまった。


「スリップして事故って救急車で運ばれた。
で、意識無い間に頭とか検査したらしくてもう平気って病院から帰らされた。
今はインフルエンザで患者が多いんだと。

で、結局、右手首の捻挫と足首の打撲」