『美紗子ー、』


ある夏の日の午後。


「ん、何?」


家に帰って部屋着に着替えていると、母が改まった様子で近寄ってきた。


『とりあえず…座って。』

「なっ、何何何ーっ?どうしたの、急にっ?」


いつもおちゃらけ全開の母がこんなにも畏まっていると、娘の私はどうしたらいいか分からなくなってしまう。

とりあえず、母に言われたとおり、ダイニングのテーブルイスに腰掛けた。


「ど、どうしたの?」

『うん、それがね…。もう美紗子も23歳じゃない?』

「うん。そうだけど…」


私、秋月 美紗子は23歳になり、社会人として働き始めて、一年とちょっと。

段々、社会人として慣れはじめているけれどーー。

それが、何?って話だ。


『来たのよ、ついに。』

「ん?」


何が?

主語を言ってもらわないと、反応にも困ってしまう。

一体、何が来たってゆうの?