私は 寺坂 美鈴 (てらさか みすず)。
いたって普通の女子高校生。
今日、私はヤンキー君に恋をした。
朝
「・・・てめぇ・・ふざ・・じゃ・・・ねぇ・・・・」
「・・・俺・・か・・・んけ・・・ねぇ・・し」
「・・・やめ・・・よ・・・こ・・じ・・・っ!」
学校へ行く途中、男女の争う声が聞こえた。
一人の男が大声をだして怒鳴っている。
それを女が止めているみたいだ。
・・・朝から修羅場にでくわすなんて・・・。
ツイてない・・・。
私は足早にその道を通り過ぎようとした。
「バキッ‼」
「!?」
人を鈍器のようなもので殴る音が聞こえ、私はその場で固まってしまった。
「・・・ってぇなぁ・・・」
「やめてよ、こうじっ!!いいかげんにしてっ!」
「っはぁ!?お前はそっちの味方かよ!?」
「そういうんじゃないけどっ!・・・っやりすぎだよっ!」
「これぐらいしとかねぇとこりねぇだろ」
「こうじおちついて、ねっ?もう学校いこ?」
「・・・そうだな。ったく、モモはかわいんだからこれからは気をつけろよ??」
「・・・うん」
こうじという男がいかにもギャルっぽい女の肩を抱いて私の横を通り抜ける。
私はその間ずっと下をみていた。
そのとき、私の視界に金属製のバッドが見えた。
多分、このバッドで殴ったのだろう。
赤い血の斑点がついている。
頭をこのバッドで殴ったとしたら手当しないと出血多量で死んでしまうかもしれない。
急いで救急車を呼ばなきゃ。
携帯の充電あったかな・・・。
はは、自分冷静すぎ・・・。
「おい、そこのお前」
一人で固まっていた私は男の人の声が聞こえ、我に返った。
「はっ、はい!?」
もうこうじとかいう男とギャルはどこかへいってしまったようだ。
びっくりしすぎて声が裏返ってしまった。
はずかしぃ・・・。
「携帯かしてくんない?」
声のする方をみると口の端に少し血の滲んだ男が壁にもたれて座っていた。
「えっ?・・いいですけど・・・。大丈夫ですか・・?」
男は面倒くさい顔をして「別に・・・・」と短く答えた。
しかし、よくみてみると頭から血が垂れてきている。
どうみても大丈夫ではない。
私はとっさに男にかけより、ポケットからとりだしたウサギ柄のハンカチで傷口を押さえた。
「いって・・・」
男は顔を歪ませて私の手を振り払った。
「なにすんだよ。やめろ。そんなことしてもお前のこと好きにならねぇぞ?」
見当違いのその言葉に私はかなりムカついた。
頭から血を流した男の傷口をハンカチで押さえるという行為はいたって普通だと思うのだが!?
「あんたのことが好きでやったんじゃなくて、心配したからやったの!!勝手に勘違いしないでくれる!?」
「・・・わーったって・・・。ありがとうございますー」
「っなにその態度。あーわかった!うさぎ柄なのが気に入らないんだ!だったら家まで全力ダッシュしてくまちゃん柄もってこよーか?こっから近いから音速でもってこれる・・・。なに笑ってんのよ!」
「ははっ、すげーキレっぷり!はははっ!めっちゃうける」
「ちょっ、人が怒ってるのに!・・・いい加減笑うのやめてよ・・!」
「はははははっ!」
この男、人のことを完全無視して笑っている。
しかも腹抱えて笑ってるし・・・。
・・・ってゆーかこいつ、性格はあれだけどルックスはいいかも・・・?
髪は茶色っぽくワックスで固められているが、さっき殴られた衝撃のせいだろうか・・・すこし乱れている。
まつげは眺めで、全体的に整った顔立ちをしている。
首にはネックレス・・・チャライ。
笑った顔は子猫を想像してしまうくらいになごやかだ。
口の端がうにっとあがって・・・やばい、もろタイプだわ・・・\\\
「・・・なに見とれてんの・・・?」
はっと我に返る。
「べべ別に、みとれてたわけじゃぁ・・・」
「ふーん?俺が声かけるまで目がはーとまーくになってたけど?」
おもいっきり動揺した私が顔をあげると、意地悪そうな目で私を見つめる男が目の前にいた。
!!!!!
かんっぜんに弄ばれてるっ!
「・・・まっ、いいや。で、、、携帯貸して?」
「あっ、そーだった」