優子は薄情者だ。
私にメイクして、浴衣の着付けもしてくれて、髪形までセットしてくれてから急に、お腹が痛いと言い出した。
◇◆◇一時間前◇◆◇
「うわーお腹いたーい。今日の祭り、やめとくわ。」
優子はお腹をさすりながら、うずくまる。
「えっ!?何言ってんの、優子。」
「だってお腹痛かったら、祭りなんて全然楽しめないじゃん。だからやめとくー。」
意味がわからない。っていうか、ほんとにお腹、痛いのか?
「えっそれじゃ私、一人で行くの!?汐田くんと林原くんなんて私、全然知らないのに!」
「別にいいじゃん。谷崎くんのことは知ってんだし。それに、その辺は手を回してるから大丈夫だよ。」
そういって優子は怪しげな笑みを浮かべた。
...優子さん、純粋に、怖いです。
そんな訳で、私は現在、一人でみどり神社に向かっている。
慣れない浴衣と下駄のせいでちまちまとしか進まない。
けれど、アスファルトに響く下駄の音はどこか懐かしくて、
谷崎と会えることが楽しみで
それは苦には感じなかった。