翌日、午前11時。

カフェがオープンする時間に合わせて店に向かったあたしたちは、お互いに変装の出来を確認しあうと、『ねこみみ。』のドアを開けた。


「お帰りなさいませ~、お嬢さま方~」


とたん、野太い声が耳に入る。

この中に葉司の声も入っていると思うと、やはり心境は穏やかではなく、複雑極まりない。

葉司の様子をこっそり窺い、メルさんにお礼と謝罪を伝える、という本来の目的も投げ出して帰りたくなるほど、あたしには異空間だった。

そんな中、奈々は目をキラキラと輝かせ言う。


「めっちゃ興奮してきた!」

「……よかったね」


正直すごい、覚悟しておいたほうがいい、と朝から何度も言っていたのだけれど、どうやら奈々には関係なかったようで、すでに「こちらへどうぞ」と席まで案内されている。

そして、異様な早さでスナップを効かせ、クイクイっとあたしを手招きしている。

……すでにテンションは最高潮なようだ。


「早く早くぅ!」

「分かった、分かった、今行くよ」


そうして、仕方なく奈々の隣の席に腰を下ろすと、メニュー表と水を持ってきた、メイド服姿のオトコの娘がさっそく聞いてきた。