(南斗晶)

会場スタッフによる、リング上の消火活動が行われたあと、健介君の勝利者インタビューがありました。


全身あちこちに包帯を巻いた健介君は、リングの上で、マイクを持ちました。


「えっと、何て言ったらいいのか……。田山聡君は、強かったです。本当に強かったです。少しでも、試合の状況が違っていれば、彼が勝っていたかもしれません。今日の試合で、俺は自分の強さというものを、自分の空手というものを、しっかりと見つめ直すことができました。こんないい機会を与えてくれて、南斗プロレスさんには本当に感謝しています。本当に、ありがとうございました」


健介君は、深くおじぎをしました。


会場中に、拍手が響きわたりました。


アトミック南斗も、健介君のお父さんも、神妙な面持ちで拍手を鳴らします。
私も、拍手をしながら、しかし胸の中は不安に包まれていました。


健介君は、すごいひとです。


本当に、すごいひとです。あんな、すごいひとの彼女が、私なんかでいいのでしょうか?釣り合いがとれていないんじゃないのでしょうか?
そんな劣等感のようなものに包まれて、私は下を向いていました。


「南斗晶さん!」


その時、私の名前が呼ばれました。


顔をあげると、リング上で、私をまっすぐ見つめる健介君と目があいました。


健介君はマイクを使わず、自分の声で言いました。


「この場を借りて、言いたいことがあります!」
「……え?」
一回大きな深呼吸をしたあと、健介君は、顔を赤くしながら、大声で言いました。






「好きです!俺と付き合ってください!」





声は、会場中に響きわたりました。