(南斗晶)

いよいよ日曜日になりました。


私は健介君と、駅前で待ち合わせました。


やってきた健介君は、黒いタキシードを身につけていました。かっこいいです。素敵です。輝いています。背後に、昔の少女漫画のようなたくさんの花が見えそうでした。


私と健介君は、並んで山へ向かいました。
のどかな山道を、二人で楽しくお話しながら、歩いてゆきます。
おだやかな風が吹いています。時々、かわいらしい鳥の鳴き声が聞こえてきます。やがて二人の距離は縮まり、気がつけば手をつないで……






それが、私がぼんやりと空想していたデートの光景でした。まあ、タキシードは無いとしても、ゆるやかな山道を二人でのんびりとハイキングすることになるだろうと予想していたのです。



しかし、現実は、私の予想の斜め上をいっていました。



まず、待ち合わせ場所に来た健介君の服装が空手着でした。かなり汚れていました。
背後に、昔の少年漫画のような激しい炎が見えそうでした。
しかも、その空手着には、おそらく稽古でつけたのであろう、返り血が乾いてこびりついていました。


「健介君……、その服……」
「ああ、これが俺の普段着なんだ!」
「…………そうなんだ」
いえ、いいんです。健介君の服のセンスが少しアレでも、別にかまいません。がっかりしなかったと言うと嘘になりますが、それくらいのことで嫌いになるほど軽い女じゃありません。




問題は、山に入ってからのデートコースでした。