ケータイ小説 野いちご

ヒミツの隠れ家

第六回



突然現れた小動物のような女の子は、肩まで伸びた栗色の髪を内巻きにし、黒い瞳を潤ませている。

「加絵ちゃん、どうしたの?」

樹さんはカウンターから出ると、女の子の名前を呼んで歩み寄った。

「樹さん……私には……もう、樹さんしかいないんです」
「えっ? ちょ、ちょっと……」

女の子は涙を零すと、樹さんの胸に抱き着いた。さすがの樹さんもうろたえて後ずさっている。

このカフェに、私以外のお客さんがいるところ、初めて見た。

私がなんとも言えないショックを受けていると、隣にいた茜さんは頬杖をついて、ため息を零す。

「もう……樹ったら、女の子を泣かすなんて悪い男ねぇ」
「樹さんと親しいみたいですけど、彼女は常連さんなんですか?」
「さぁ……私は初めて見たけど」

茜さんは首を捻った。茜さんが知らないということは、樹さんが一人でお店にいる時に仲良くなったお客さんなのかな。

常連さんができるのは良いことだとわかっているけど……ちょっと、イヤかも。

子供みたいな嫉妬心で、胸がチリチリと焼けつく。



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