私が歩と恋人同士として再び過ごすようになって、歩は当然のように結婚に向けて動きだした。

『一花のご両親が結婚に反対しても、諦めずに説得するし、一花とご両親の関係を壊さないようにする』

いつものように、歩の部屋で夕食を終えてコーヒーを飲んでいた時、真面目な顔で歩がそう言った。

ソファに並んで座る私の手を両手で握りしめて、覚悟を決めたかのような重々しい声で話す様子に驚いた。

『俺の父親のことは、わかってもらうしかない。背負わなくてもいい苦労を一花に背負わせることになるかもしれないけど、俺が全力で守るから、だから、ご両親が俺との結婚に反対しても、俺を信じてついてきて欲しい』

振りかえれば、それが歩のプロポーズの言葉だったんだろうな、と思う。

歩にしてみれば、亡くなったお父さんのことは一生抱えていかなければならない重い感情だ。

お父さんが引き起こした事故によって悲しい運命を背負わされた人がたくさんいるという現実から逃げることは、絶対にできない。

謝罪の気持ちは一生持ち続けていかなければならない。

心無い非難や中傷に苦しむこともあるに違いない。

そんな状況の中、私が歩と結婚するということは、私もその現実を背負わなければいけないということ。

大切な娘に、そんなつらい未来を背負わせたいと思う親なんていない。

私の両親だって、きっと歩のお父さんのことを知れば、私が歩と結婚することにあっさりと賛成してくれるとは思えない。