綺麗な秋空が広がる日曜日に、私と歩は結婚式を挙げた。

歩はお父さんの過去を気にして、結婚式を挙げてもいいのかと悩んでいたけれど、歩をずっと支えてきた社長たちの後押しもあり、式と披露宴を挙げることとなった。

歩と二人で片桐の社長に結婚することを伝えに行った時、普段から懇意にしている、そして会社の行事を催すことも多い「アマザンホテル」はどうかと提案された。

アマザンと言えば、国内屈指の超高級ホテルだ。

私たちの収入では簡単に「はい、そうします」とは言えない、敷居の高いホテルの名前を出された途端、『身の丈に合ってません』。

歩はそう言って社長の提案を断った。

結婚式という慶びの舞台に自分が立つ。

それは、歩にとってはお父さんの事故のことを考えれば躊躇してしまうことなのかもしれないけれど、女の私にしてみれば、アマザンで花嫁さんになれるなんて、それはそれは夢のようなことで、憧れも憧れ。

そう思って、少しだけ拗ねてみたけれど、「ごめんな」と言って申し訳なさそうに謝る歩に、私はそれ以上何も言えなかった。

歩だって、私がアマザンでの結婚式を望むのなら、それを叶えてあげたいと思っているはずだ。

歩が私を大切に、そして少しでもたくさんの幸せを与えようとしてくれる日々を振り返れば、そんなことすぐにわかる。

確かに、アマザンで花嫁さんになることはとても魅力的で、憧れのため息も思わず出る。

でも、私が一番に望むことは、歩が私の花婿さんになってくれること。

それだけでいいんだと、身の丈に合わない願いを笑い飛ばした。