慶太side



「お前、卵割って。俺は玉ねぎ切る」

「はいよん」


親父と奈緒子が、旅行に出かけたその日の昼…

俺と歩夢は、昼飯にオムライスを作ることにした。



オムライスといえば、色々と思い出がある…

俺が一番覚えてるのは・・小学校のとき…




…………



「え!?親父がインフルエンザ?」


俺と歩夢が、小4の時…

学校から帰ると、歩夢が血相を変えて、俺の元へやって来た。



「うん…会社早退して病院行って、今は寝てる。お母さんに連絡したら、今日は仕事でおそくなるんだって…だから、夕飯は出前取ってだって」


歩夢は、二千円札を俺に見せた。




「なんか作るか」

「…作る?」

「そ。で、その二千円…ふたりで分けよ」

「そっか、そうだね♪じゃあ、何作るー?」

「いつものでいいだろ」

「そだね」


歩夢は、キッチンに向かった。

そして冷蔵庫から、材料を出す。



”いつもの“でもうわかる。

俺たちが作る料理は、これしかない。




30分後


「オムライス完成ー♪」


歩夢が皿に乗ったオムライスを見て、はしゃいでいる。



そう、オムライス。

俺たちが唯一作れるものは、オムライスだけ。