週が開け、会社で香川に合う事に気まずさはあるものの、自分でも意外なほど加奈子の気分はさっぱりとしていた。香川の自分への態度が変わっていたらどうしよう、という懸念が多少はあったが、香川の態度は以前と変わらず、加奈子はホッと胸を撫で下ろした。


元に戻っただけ。加奈子はそう割り切る事にした。大輔への想いは無理に抑える必要はなく、密かに想えばいい。もしかすると美由紀とゴールイン、という事があるかもしれないが、彼が幸せならそれでいい、と思う事にした。そう思える自信が持てる程、加奈子の気持ちは穏やかだった。


しかしその大輔は月曜から体調不良で休んでいて今日で3日目。このところ元気がなく、痩せたようだからとても心配だ。美由紀に大輔の事を聞いてみようか。そう思っていたところに美由紀の方から声を掛けられた。


「主任、お話したい事があるのですが、お時間いただけますか?」


いつになく神妙な感じで、表情はかなり暗い美由紀であった。


「いいわよ。じゃあ喫茶に行きましょうか?」

「はい」


加奈子は社内の喫茶室へ向かいながら、美由紀の話は何だろうかと考えた。仕事かプライベートか。もし後者なら、きっと大輔に関する事だろう、と。


(もし聞かれたら、嶋田君の事は諦めたと言おう。だから私に気兼ねしないで、嶋田君と仲良くしてね、と言おう)