喫茶店で、大輔の横に座る桐谷美由紀を見ながら、“ああ、そういう事なのね……”と加奈子は思った。


職場を出る時、美由紀は必死と言ってもよいくらいに一緒にランチに行きたがったが、それが加奈子にはちょっと大げさに思えたのだ。しかし今の美由紀を見ていて、その理由が分かった気がした。


美由紀は、殆ど大輔の横顔ばかりを見ていた。それもニコニコと嬉しそうに、目をうっとりとさせながら。


(この子、嶋田君のことが好きなんだわ……)


美由紀は今年入社したばかりとの事だから、短大出なら20歳。4年制の大学でも22歳前後という事になり、実際に見た目もそれくらいだ。24か25歳の大輔と美由紀なら、年齢的にちょうど良い組み合わせと思えるし、実際にお似合いだ。と加奈子は思った。素直な気持ちで。


「岩崎君。谷崎志穂さんとは仲が良かったよね? あ、今は神林志穂さんか……」

「はい、彼女とは同期でしたから」

「元気にしてるのかな?」

「はい、元気です。娘さんも元気でした」

「穂奈美ちゃんっていうんですけど、すっごい可愛いですよ?」


大輔の言葉に、三人の視線が彼に向けられた。