海斗のいない医局はしるふが思っていたほどに違和感のあるものだった

海斗の代わりの医者が呼び寄せられたけれど、海斗の机はそのまましるふの隣にある

机の上のものは海斗がある程度片づけて行ったが卓上に飾ってある写真や本立てはそのままだ

写真はしるふが勝手に海斗の机に置いたものだけれど海斗がそれをどけようとすることはなかった

黒崎病院に正式入社した年の春

医局のメンバーで撮った集合写真

たぶん初めて海斗と一緒に写った写真

それを見つめて最近は言い表せない寂しさを覚える

五月に入り、新しい医者も黒崎病院に慣れ、医局のメンバーとも打ち解けてきたけれど、海斗がいた時の安心感は得られない

それに気が付いてしるふは、自分がどれだけ海斗の存在に支えられていたかを今更のように感じた

いつもはそこに座っている存在がいないだけで居心地のいい医局に少し違和感を覚える

気が付くとふと海斗の机に目をやっている自分がいる

その度に一年という歳月の長さを、けれど海斗がいればとても短いその時間を思い知らされるのだ