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「今日から入部してくれた木下美波さんです。木下さんは転校生だから、みんな色々教えてあげてね」


部活の時間、目の前に現れたのは木下美波だった。


その姿を見て、私は固まる。

パートリーダーの声も私にはうまく届かなかった。


「みなさん、よろしくお願いします」


そう言いながら、いかにも育ちが良さそうな微笑みを浮べる。

おいおい、私にとった態度とずいぶん違うじゃないか、とつっこみそうになる自分を何とか押さえ込む。



和希くんは彼女のことを"好きだった"と言った。

その言葉を思い出すと、胸がズキンと痛む。


そんな私の心の中を知ってか知らずか、木下美波は吹奏楽部に入部してきたのだ。


うう、すでに波乱の予感……。