「優音、譜読み中?」


「ううん。違うよ」


お風呂から出た仁が、上半身裸で髪の毛をタオルで拭きながら、私の隣に座る。


「雑誌?」


「うん。洋服、欲しいなって」


「今度買いに行くか?」


「行きたいけど……。いつも買ってもらってばっかりじゃ悪いよ。やっぱり、バイトしようかな」


そう言うと、仁がポンポンと私の頭をなでた。


「そんなこと気にしなくていい。まあ、働くってことを知るためには、バイトもいいと思うけど」


また私の頭をなでた仁は、テーブルの上に置いてあった煙草を手に取り、窓際に向かった。


「窓、開けるよ」


「うん」


窓を半分開けた仁は、床に座って煙草を吸い始めた。


その姿を見てから、また雑誌に目を通し始める。


窓から入ってくる秋風が、とても気持ちよかった。