私の母親は大女優、榊原碧(さかきばらみどり)。


父親は生きているのか、死んでいるのか、それすらも知らない。


私はいわゆる、隠し子というやつだ。


まだ榊原碧が若手だった頃、極秘で産んだのがこの私。


その頃、今では代表作となった映画で一躍有名になっていた彼女にとって、私の存在は邪魔だっただろう。


それなのに、なぜ産んだのか。
私は何も知らない。


物心ついた頃から母親と一緒にいた試しがない。


私は彼女と隔離され、徹底的に隠されてきたのだから。


関係者の間で育てられたが、なにせ私は動く爆弾。
たらい回しにされた。


女優、榊原碧の秘密を護るために護身術を叩き込まれ、引っ越しを繰り返す日々。


小さい頃はよく泣いたが、次第に何とも思わなくなった。







私はまず、普通の家族を諦めた。