古ぼけて台風が来ればペチャンコになりそうな

ボロアパート。


「幸運荘」



この建物は私たちに幸運をもたらせてくれるのだろうか、

さっき押した書類。


一切の権利を放棄した。


それと引き換えにこのアパートの権利書を渡された。

当然会社に雇われたの管理人と言うのではなくオーナーと言う立場に変わった。

上野のすべてと手を切り、


手切れ金代わりのこのアパートをあてがわれた。


今日からこれが唯一の私と夕の財産となった。

大丈夫、あの人が戻ってくれば状況は変わる。

唇をきゅっと結んで、

夕の待つ管理人室へ向かう。